女性に多く見られるびまん性脱毛症は、なぜ起こるのでしょうか。その原因は一つではなく、様々な要因が複雑に絡み合っていると考えられています。主な原因として考えられるものをいくつか見ていきましょう。まず、「加齢とホルモンバランスの変化」です。年齢を重ねると、女性ホルモンの一種である「エストロゲン」の分泌量が徐々に減少していきます。エストロゲンは、髪の成長を促進し、ハリやコシを保つ働きがあるため、その減少は髪の成長サイクルの乱れや、髪質の変化(細くなる、弱くなる)につながり、びまん性の薄毛を引き起こす大きな要因となります。特に、更年期以降に薄毛を自覚する女性が多いのはこのためです。「FAGA(女性男性型脱毛症)」も、びまん性脱毛症の一因と考えられています。男性のAGAと同様に、男性ホルモンの影響が関与している可能性が指摘されていますが、男性のように明確なパターンではなく、頭部全体の髪が薄くなるのが特徴です。遺伝的な要因も関わると考えられています。「生活習慣の乱れ」も大きく影響します。栄養バランスの偏った食事、特に髪の材料となるタンパク質や、成長をサポートする亜鉛、鉄分、ビタミンB群などの不足は、髪の健康を損ないます。睡眠不足は、髪の成長に必要な成長ホルモンの分泌を妨げます。過度な「ストレス」は、自律神経やホルモンバランスを乱し、頭皮の血行不良を引き起こして、髪の成長を妨げます。「過度なダイエット」も要注意です。急激な体重減少や栄養不足は、ホルモンバランスを大きく崩し、深刻な抜け毛を引き起こすことがあります。「間違ったヘアケア」も原因となり得ます。洗浄力の強すぎるシャンプー、頭皮へのダメージ、頻繁なカラーリングやパーマなどは、頭皮環境を悪化させ、抜け毛を助長します。また、ポニーテールなどをきつく結ぶことによる「牽引性脱毛症」が、びまん性の薄毛に見えることもあります。さらに、「病気や薬の副作用」が原因の場合もあります。甲状腺機能の異常(亢進症・低下症)、貧血、膠原病などが脱毛を引き起こすことがあります。また、服用している薬の副作用として脱毛が現れることもあります。このように、びまん性脱毛症の原因は多岐にわたります。原因によって対処法も異なるため、自己判断せず、専門医に相談して原因を特定することが重要です。