「育毛剤」と「発毛剤」の大きな違いの一つに、法律上の「分類」があります。この分類の違いは、製品に期待できる効果や安全性、そして購入方法にも関わってきます。まず、「育毛剤」の多くは「医薬部外品」に分類されます。医薬部外品とは、医薬品と化粧品の中間に位置づけられるもので、特定の効果・効能(例えば、育毛、脱毛の予防、フケ・かゆみを防ぐなど)が認められた有効成分が、厚生労働省の承認した範囲内で配合されています。治療を目的とするものではありませんが、人体に対する作用が緩やかであり、比較的安全性が高いとされています。薬局やドラッグストア、インターネットなどで比較的自由に購入することができます。有効成分としては、血行促進成分(センブリエキス、ビタミンE誘導体など)、抗炎症成分(グリチルリチン酸ジカリウムなど)、保湿成分、毛母細胞活性化成分などが配合されていることが多いです。一方、「発毛剤」は「医薬品」に分類されます。医薬品は、病気の診断、治療、予防に使用されることを目的とし、その有効性や安全性について、厚生労働省による厳格な審査を経て承認されたものです。人体に対する作用が比較的強く、効果が期待できる反面、副作用のリスクも伴います。現在、日本で発毛効果が認められ、医薬品として市販されている発毛剤の有効成分は「ミノキシジル」のみです(2024年現在)。ミノキシジルは、毛母細胞を活性化させ、発毛を促進する効果が科学的に証明されています。医薬品であるため、購入方法にも違いがあります。ミノキシジル配合の発毛剤は、薬剤師による情報提供が必要な「第一類医薬品」に分類されており、薬局やドラッグストアで購入する際には、薬剤師からの説明を受ける必要があります。また、クリニックでは、より高濃度のミノキシジル外用薬や、AGA治療薬であるフィナステリド、デュタステリドといった内服薬も、医師の処方箋に基づいて処方されます(これらも医薬品です)。このように、医薬部外品である育毛剤と、医薬品である発毛剤では、期待できる効果のレベルや安全性、購入方法が異なります。自分の目的(予防か、発毛か)に合わせて、適切な分類の製品を選ぶことが重要です。