AGA（男性型脱毛症）の最新治療の一つとして、近年広く行われるようになってきたのが「注入療法」、一般的に「毛髪再生メソセラピー」や「AGA注射」などと呼ばれる治療法です。これは、発毛や育毛に有効とされる様々な成分を、注射器や特殊な注入機器を用いて、頭皮の、特に髪の毛の成長に関わる毛根周辺の層に直接注入するアプローチです。従来のAGA治療では、内服薬は全身に作用し、外用薬は皮膚からの浸透に限界があるという側面がありました。注入療法は、これらの点を補い、有効成分をよりダイレクトかつ効率的にターゲット部位へ届けることを目的としています。注入される成分は、クリニックやプログラムによって様々ですが、中心となるのは「成長因子（グロースファクター）」です。KGF、IGF、VEGFなど、毛母細胞の活性化や毛包の成長促進、血行改善などに関わる複数の成長因子を組み合わせたカクテルが用いられることが多く、毛根を直接刺激して発毛を強力にサポートします。また、実績のある「ミノキシジル」や、AGAの原因にアプローチする「フィナステリド」「デュタステリド」といった成分が注入されることもあります。さらに、髪の成長に必要な「ビタミン」「ミネラル」「アミノ酸」などが、頭皮環境を整える目的で配合されることもあります。注入療法のメリットとしては、有効成分を効率よく届けられるため、内服薬や外用薬単独よりも早期に効果が現れる可能性があること、そして局所的な治療であるため、内服薬のような全身性の副作用のリスクが比較的低いとされることが挙げられます。内服薬との併用で、より高い相乗効果を目指すことも可能です。ただし、施術時にはある程度の痛みを伴うこと、注入部位に赤みや腫れなどの局所的な副作用のリスクがあること、そして自由診療のため費用が高額になりがちで、効果維持のためには定期的な継続が必要であることなどのデメリットも理解しておく必要があります。