多くの人が薄毛を気にし始めるきっかけは、鏡に映る自分のおでこが広くなったと感じたときや、排水溝に溜まる抜け毛の量を見たときです。しかし、最も恐ろしいのは、自分では鏡で見ることのできない「つむじ周辺」から静かに進行する薄毛です。家族や友人に指摘されて初めて気づき、慌てて確認したときにはすでに頭皮が透けていたというケースは後を絶ちません。なぜ、後頭部や頭頂部はこれほどまでに薄くなりやすく、そして気づきにくいのでしょうか。そのメカニズムを深く理解することは、適切な対策を講じるための第一歩となります。頭のてっぺんが薄くなる最大の原因は、やはりAGA(男性型脱毛症)による影響です。AGAは男性ホルモンの一種であるテストステロンが、還元酵素と結びつくことでジヒドロテストステロン(DHT)という物質に変化し、これが毛母細胞の働きを阻害することで起こります。実は、この還元酵素は前頭部と頭頂部に多く分布しているため、側頭部や後頭部の下側はフサフサなのに、てっぺんだけが薄くなるという独特のパターン(O字型)を引き起こすのです。さらに、頭頂部は筋肉がないため、血流が滞りやすいという解剖学的な弱点も抱えています。側頭部には咀嚼筋などの筋肉があり、動かすことで血流が促されますが、頭頂部は帽状腱膜という膜で覆われているだけで、自力で動かすことができません。重力の影響で皮膚が下に引っ張られると、この膜が突っ張って血管が圧迫され、毛根に栄養が届きにくくなってしまうのです。また、現代人特有の生活習慣も後方からの薄毛を加速させています。その代表格が「眼精疲労」と「姿勢の悪さ」です。スマホやパソコンを長時間見続ける生活は、目の周りの筋肉を疲弊させ、首や肩の深刻な凝りを招きます。首の後ろには頭部へ血液を送る太い血管が通っていますが、猫背やストレートネックによってこの血管が圧迫されると、頭頂部への血流はさらに悪化します。栄養不足に陥った毛根は、太く長く育つ前に髪を手放してしまい、結果として細い毛ばかりが増え、地肌が透けて見えるようになるのです。加えて、つむじという場所の性質も関係しています。つむじは髪が放射状に広がる起点であり、もともと地肌が見えやすい構造をしています。そのため、初期段階では「つむじが大きいだけ」と自己判断してしまい、病的な薄毛であるとの認識が遅れがちになるのです。紫外線ダメージの影響も見逃せません。頭頂部は体の中で最も太陽に近い場所にあり、直射日光を浴び続けています。紫外線は頭皮の細胞を破壊し、乾燥や炎症を引き起こすだけでなく、毛包幹細胞にもダメージを与えます。顔には日焼け止めを塗っても、頭皮の紫外線対策をしている人は稀でしょう。長年の紫外線ダメージの蓄積が、加齢とともに薄毛として顕在化してくるのです。このように、頭のてっぺんはホルモン、血流、生活習慣、外的要因という四重苦にさらされやすい過酷な環境にあります。自分では見えない場所だからこそ、意識的にケアを行い、定期的にチェックする習慣を持つことが、未来の髪を守るためには不可欠なのです。
自分では気づけない頭のてっぺんが薄くなる真の原因